第1章 指導者集団づくりをすすめるとき
~職場を「オレンジ」と「黄色」に輝かせて~

●職員集団がひらかれた人間関係で築かれていてこそ
真っ黒の波が襲いかかり、「人・ものすべてを押し流す」―-津波の恐ろしさに息をのみました。三月十一日、東北を襲った東日本大震災です。一七年前に、阪 神・淡路大震災を経験した私たちには、「子どもたちは逃げることができただろうか、避難所でどうしているのだろう」、そんな気がかりなことが頭をよぎりま す。
「騒騒しいところはパニックになるんです。体育館では走り回って怒られっぱなし、避難所へはとても・・・」と自閉の子をもつ母親、「外に出られないので家 の中で荒れています」という母親は、一日も早い学校の再開を、安否確認にうかがった先生に訴えます。自宅の全壊、半壊の職員もおられ、カバーし合う指導体 制がとれるかどうかが再開のカギです。職員一人ひとり、家族の事など個別の困難な事情も抱えています。時間をかけた率直な話し合いが必要です。通学や給食 のこともあります。何事もお伺いをたてなければすすまない学校で、みんなの合意のうえでの緊急の判断が求められました。「学校再開」のためには、クリアし なければならない問題が浮かびあがってきます。学校行事を中止してはという意見もありましたが、学習発表会は予定通り、二月の雪山合宿も少し日をずらして やろうと決めました。「こんなときだからやめよう」でなく、「こんなときだからこそ、やろう」という先生方の気持ちが勝っていたようです。
震災後、学校の再開は「教職員集団のひらかれた人間関係ができていたかどうかにかかっていた」という報告をあちこちから聞かされました。日々の確かな教育 実践に支えられた教職員集団の自治の力が、困難をのりこえていくバロメーターであることを、あらためて確かめ合えたのもあの震災でした。
大事なことはみんなで話し合って
職場の「民主化」ということが、学校職場では戦後ずうっと叫ばれ続け、今も、職場づくりのスローガンとなっています。私は、そんなに大きく身構えなくて も、「大事なことはみんなでよく話し合って決めよう。決まったことは、みんなで守ろう。話し合いの際には、問題の処理は子どもにたちかえるという物差しを いつの場合も手放さないようにしよう」―-このことを、いつも念頭におくことにしました。集団を構成するみんなが、おたがい納得しあうことが開かれた職場 づくりの出発点ではないでしょうか。
「ねがじん」創刊号(「みんなのねがい」をつなげる情報誌、2011・1 発達保障研究センター発行)には「みなさんの学校の職員室はどんな色?」という小さな囲み記事が載っています。明るく、アットホームな雰囲気のあるところ は「黄色・オレンジ」となるが、「グレー」も多いとあります。そこでは、暗く、重たい空気に長居したくないと感じるようです。納得しないまま、もやもやし た気持ちを残したままことが動くとすれば、「グレー」にならざるをえないでしょう。「ひらかれた」とはほど遠い職場では、とうてい大震災に立ち向かうこと はできないでしょう。ひとりでものを考える空気が漂い始めると同時に、赤信号が点滅を始めます。

●みんなで知恵をだしあって
今度の東日本大震災では「原発事故はおさまるのかな」と、不安に襲われています。一か月たった今もその原因がつかめず、放射性物質の放出という深刻な事態 となっています。収束のメドさえついていません。毎日、テレビの前で東京電力(東電)や研究者と呼ばれる方の話に耳を傾けていたが、こんなに長くつき合わ されると、「みんなわかっているんかいな。経産省のお役人の天下りではなあ」と、つい思ってしまいます。事態が悪い方向に展開していくたびに、前に言った こととちがう話がとびだします。できるだけ被害を低く伝えようとする東電の「ウソ」、それをうのみにする官邸、一企業に振りまわされる政府、そんな構図が 透けてみえます。「みんないろいろしゃべっているけど、ほんとのところ、どないしていいんか、ようわからんのやろうな」などと思ってしまいます。しかし、 そんな人ごとのように言ってすますわけにもいきません。東電とか、安全委・保安院などにまかせておかず、“ほんとうの専門家”を集めて知恵をだしあうべき ではないのか――ひとりで、ものを考えとったらえらいことになるでと、テレビに向かって独り言を繰り返しています。
それにしても、この国は弱い立場の人への冷たい扱いは、少しも変わっていません。命がけで事故処理の作業にかかる作業員の方について、東電は協力会社の社 員というだけです。下請けの会社の方ではないのでしょうね。放射能汚染について、漁師や農家の人へ何の説明もしないで放出する配慮のなさにもびっくり。 「震災弱者」とよばれる障害者や高齢者は、今どうなっているのだろうと思うと気が沈んでしまいます。

●私たちをぬきに、私たちのことを決めないで 
事態の収拾の見通しのないなか、復興のあり方について、早くもいろいろと述べる方が登場、「住まいは高台に、平地を緑地に」とか、「漁師さんは港から離れ た住まいから通勤を」など、津波の教訓からでしょうが、まちづくりは、そこに住む地域住民が考えることです。けっして上からの指示や押し付けで決めること ではなでしよう。。障害者自立支援法見直しを求める運動の中で語られた「私たちを抜きにして、私たちのこと決めないで」ということばが浮かんできます。
   
職場や地域を「オレンジと黄色」に輝かせる力は、「全障研とみんなのねがい」です。その「ねがい」をみんなで語り合い、そして学び合いましょう。
「ねがいをつなぐー若者ヘのメッセージ」は、会員のみなさんといっしょにつくるページです。ご意見、ご感想などお待ちしています。月に一回のお付き合いをよろしくお願いします。


(支部ニュース掲載日:2011年4月12日)